Part.02

リブランディング
振り返り

ブランド
デザイナー
×リブランディング
プロジェクトメンバー

Crosstalk「リブランディング」を
振り返る。

前身ブランド「ジ・アーバネックス」が
リブランディングを経て「シーンズ」に
生まれ変わるまでには、
1年以上の時間をかけ、その間、幾度もの
ワークショップが重ねられました。
当時ファシリテーターとしてお力添えいただいた
ブランドデザイナー瀧口氏をお招きし、
担当メンバーとともにリブランディング時の
苦楽を振り返ります。

大阪ガス都市開発リブランディング時責任者 寺前慶一 | 大阪ガス都市開発リブランディング時責任者 小松莉果 | ブランドデザイナー 瀧口幸明氏

Before Rebranding

01リブランディングに至ったきっかけは?

寺前

当時、分譲マンション事業がちょうど10年目という節目だったんです。それで、当社の分譲マンションブランドをもっと良いものに進化させていくにはどうしたらいいかとみんなで悩んで。

小松

物件ごとには色々な取り組みを個々で取り組んでいましたが、「ブランド」としての良さをうまく発信できていなかったんです。

瀧口氏

最初の印象としては「どんなブランドなのかよく分からない」というのが正直な感想で(笑)。ブランド名も旧社名を用いられていたこともあり、一般の人からすると「分譲マンションブランド」としてのイメージが分かりづらいのではないかと思いました。でも大阪ガス都市開発の担当者がみんな熱い人で、個性は違うけれどそれぞれの人の情熱が伝播していって、この分譲事業を拡大していきたいという想いはちゃんと伝わってきました。

瀧口氏

PROFILE

ブランドデザイナー

瀧口 幸明(たきぐち・こうめい)

大学卒業後、大手不動産会社にて大規模事業の企画販売に携わる。その後、外資系広告会社に転職。広告宣伝業務・新規事業開発・商品開発・企業ブランディングなど多岐の業務に携わる。2016年、ブランディングカンパニー「株式会社アンド・フォース」を立ち上げ、東京と沖縄を拠点として全国の企業のブランディング業務支援を行っている。

「ブランド」とは何か?
模索の始まり。

瀧口氏

まずは外から見たイメージと自分たちが持っているイメージを整理することから始めました。みんなそれぞれイメージが違うので、一度テーブルに出してみましょうと。大阪ガス都市開発という会社の歴史性は何なのか? 社会性は何か? 独自性は何か? と、「自分たちの企業を知る」「自分たちの分譲マンションブランドを見直す」ことによって整理されていくことが大事という話をしました。その一つの取り組みがワークショップです。私はファシリテートをしていましたが、答えの方向性は決めずに、どういう意見が出て、どういう方向性ならみんなが納得するのかというのをプロジェクトメンバーと模索しながら推進していました。

小松

最初は、新入社員から役員まで世代もバックグラウンドもバラバラな人たちが集まって方向性を決めようとしていました。みんな好みも違えば発言量も違う、全然すんなりいかなくて。でも立場は関係なく、思っていることを言えるすごく良い機会でした。それぞれが「あ、そんなこと思っているんだ」と初めて知ることができました。

寺前

ワークショップの時も「大阪ガス都市開発の分譲マンションブランドとは?」がみんなパッと出てこなくて、何枚もの色んなイメージ写真から「当社のブランドイメージはこれ」と思うものを選んでもらったらやはり結構バラバラで。その前に他社さんのイメージで試したら、ピタッと一致するんですよね。「私たちのブランドイメージはみんな意外と揃ってないですよね、これが現状なんですよ。なので、ここを揃えていきましょう。」っていう話をしました。

02リブランディングはどのように進めた?

【コンセプト策定】
新たな方向性。キーワードは「感動」。

小松

瀧口さんにサポート頂きながら、「お客さまを主語にした目線」か「私たちを主語にした目線」か、また、「大阪ガスの安心感や温かさ」というお客さまに寄り添うイメージをベースとするのか、「大阪ガスの進取の気性」という新しい期待感をベースにするのか、それぞれどちらの方向性を軸としていくかを議論しました。結果「お客さま目線」×「大阪ガスの新しい期待感」の方向性に決まりました。お客さまに共感していただけるように、どんな人生、暮らしが待っているのか想像できる方向がいいよねって。その時にキーワードとして「感動」が出て来ました。

↓

【 スローガン策定 】
「一邸」に込められた大阪ガス都市開発らしさ。

寺前

スローガンも、当初「人生に感動する住まいを。」という案もありましたが、最終的に「人生に感動する一邸を。」にしました。普通は戸建住宅に「邸宅」という表現を使うけれど、マンションでも、私たちはお客さま一人ひとりの暮らしにこだわってつくっているという姿勢を表すなら「一邸」の方が良いですよね、という話になって。

瀧口氏

大阪ガス都市開発らしさって何? と考えた時に、親会社である大阪ガスのイメージは切り離せない。エネルギーインフラ事業は生活者にとって「地域密着」のイメージがあって、それはマンション事業においても同じで。「お客さま一人ひとりの声を拾う」というようなことが自然にして沁みついているんです。そこからできているのが、商品開発プロジェクト「ラクアス」であったり、その他の商材でも、「一つひとつ丁寧に」みたいなニュアンスがある。そこがすごく大事で。「一邸」という言葉を選ばれたのは企業文化だな、大阪ガス都市開発にしか出てこない言葉だなと思いました。これが「人生に感動する住まいを。」にしてしまうと、途端にメッセージや姿勢の独自性が弱まってしまいますよね。

寺前

この段階ではまだブランドネームを変える前提ではなかったんです。ただ、コンセプトが決まって、改めてコンセプトとブランドネームを照らし合わせてみたら、「やっぱり変えよう」という方向になったんですよね。

瀧口氏

みなさんが共通の体験をしていく中で、違和感も共通になったのだと思います。

↓

【 ブランドネーム策定 】
イチから出し直して満場一致。

瀧口氏

ネームはワークショップで案を広げたのですよね。私たちのほうからは30~40案出しました。大阪ガス都市開発さんからも全員必ず1案は提出で合計200案ほどいただき、チームごとに厳選していきました。

寺前

でもこれはという案がなく、着地できずにどうしよう……と迷った時間もあって。なので、さらに考えて考えて、最終的に社内から「シーンズ」という案が出てきた時には、すごくフィット感のある言葉だなと、衝撃が走ったんです。

瀧口氏

絶対これがいいと思いました。ブランドは与えられるものでなく、みんなでつくるものなので、誰から答えが出てもいいのですが、本質であれば大阪ガス都市開発から出た方がいい。「これ以上出ません」というぐらい案が出た中で、しっくりこなくて「やっぱりもう一回考えよう」となって。想いが強まった中で出てきたものがブランディングとしては最良なのですが、最終的に残った候補の中に「SCENES」があり「絶対これがいい!」と。

↓

【 ロゴ・カラー策定 】
従来の固定概念を打破するカラー。

瀧口氏

ロゴはいろんな書体を試しましたね。奇をてらうと強さは出るけれど人を選んでしまうので、普遍的でどの世代にもニュアンスが伝わることを念頭に置いていました。あと、字間とか字の太さですね。太すぎると野暮ったくなり、細すぎるとロゴとしての視認性が悪くなる。SCENESはSとSで挟まれている部分がポイントなので、ここにアテンションをつけていくためにSの大きさとかハネとかにもこだわって作成しました。

寺前

ブランドカラーについては、コンセプトの「期待感」でいうと、色は一般的には明るくなるほど期待感が高まり、落ち着いた色合いになるほど安心感に繋がるイメージがある。今までのブランドカラーは紺色でしたが、「シーンズ」では「明るい色」「落ち着いた色」の2択で考えることにしました。

瀧口氏

マンションデベロッパーは高級感だったり重厚感だったりを表現しようとして、どうしても落ち着いた色を選びがち。結果、ブランドの個性がうまく表現できないと感じることがあります。

「シーンズ」は新発ブランドになるのでパッと色でもキャッチーに照らしていく必要もあるし、普遍的にする必要もある。今までと同じということで紺にするのは簡単だけど、いかに「シーンズ」らしい世界観をつくるかが使命だったので、色には本当にこだわっていこうとメンバーの皆さんには話をしました。

落ち着いた紺になったら変化が弱く、リブランディングした意味が薄れてしまうので、紺がいいという社内意見が多くなってきた時に、決めるのは社員のみなさんですけど、「リブランドしても結局他社と同じように見えてしまう。せっかくならこのタイミングで変えてみませんか?」と言っていました。

小松

「高級感を出そうとしたらやっぱり濃い色だよね」という固定概念を打破して、「新しい期待感」というコンセプトに立ち返って一歩踏み込む勇気が必要だった。

寺前

固定概念があったものの、瀧口さんが言うようにリブランドする意味とか、コンセプトを加味し、皆が悩みに悩んで選んだ結果、僅差ではありましたが、明るい色に決まったんです。

小松

今は、「明るい色が目立つし個性が出ているので、今の色にしてよかったよね」って言ってもらえるようになっているので、よかったと思います。

瀧口氏

明るいブルーに決まった後、クリエイティブの表現としてどうやって有効的に使うのかを話していました。「シーンズ」の原点は、シーン(場面)。その様々な表情の重なり。住まう人の鮮やかな景色を絡めていきたいなと。それで、場面を切り取るような「フレームデザイン」を提案させてもらって。このフレームの先に人や色んなシーンをフォーカスして、人それぞれの暮らしを描こうと。明るいブルーとフレームがあることで「感動」がポジティブに伝わります。

After Rebranding & Future

03リブランディング後のシーンズは?

小松

リブランドをきっかけにそれぞれにブランド意識が芽生えたように思います。広告物やものづくりでも「シーンズって何を大切にしているんだっけ?」と立ち返るはじめの一歩になりました。部署を横断して世界観を合わせる指標ができたことで、デザインなどにも統一感が出るようになりました。実際、開発に携わるメンバーからも「『人生に感動する一邸を。』に匹敵するものをつくらないといけない」といった言葉を聞くようにもなりました。

寺前

組織が成長して新しい人がどんどん入ってきて、様々なメンバーで分譲マンションをつくる時、今は「シーンズ」という指標があります。このよりどころがなかったら風化していくと思うんです。新しく入社した方も「人生に感動する一邸を。」は全員知っているし、開発に関わるメンバーは、「シーンズ」について語れるようになっています。

04これからシーンズに期待することは?

瀧口氏

「シーンズ」という一つの事柄に対して語れることが増えたのは、ブランドを愛している人が増えたということなので、自社の中で愛されるブランドができ、非常に嬉しいです。時代変化や人口の減少、価格高騰など消費行動の妨げが増える中で、「シーンズ」が選んでもらえる存在になるよう、お客さま目線を軸にしたブランドの意義を大切に育てていってほしいと思います。それは例えば、体験の提供です。消費の基準がスペックだけに捉われなくなった今、「シーンズ」はお客さまの立場に立った状態で、どういう体験を提供できるのかということを描いていってもらいたいですね。

寺前

人は、自分が想像している期待を超えた時に感動する、というので、これからも、お客さまが「シーンズ」での日々の暮らしの中で感動していただけることを目指して、期待を超えるものづくりをしていきます。

小松

皆で色々な想いをもって作り上げたブランド「シーンズ」。スタートしてまだ5年ですが各々が愛情をもって育ててきました。これからも、お客さまの日々を彩れるような「一邸」を提供できるよう尽力していきます。