Part.01
ブランド戦略会議
振り返り
ブランド戦略
アドバイザーブランド
マネジャー
今から約5年前に誕生した、
大阪ガス都市開発の分譲マンションブランド
「シーンズ」。
その魅力をどのようにお客さまにお伝えすべきか、
不動産とは異なる視点を持つ
お二人をアドバイザーとして迎え、
幾度ものミーティングを重ねてきました。
今回は当時の思い出を、
ざっくばらんにお話しいただきます。
不動産業界はまったく知らない世界で、最初は自分に何を求められているのか分からなかったんです。でも、マンションを買う人は、その人の中の暮らしの物語を大切にして買うのだと思い、物語をつくるのは普段テレビの仕事でやっていることと同じ。だから、住む人の気持ちをつかむ物語づくりを、大阪ガス都市開発さんと一緒にやっていくのかなと考えてお引き受けしました。
声が掛かった時はビックリしましたが、大阪ガス都市開発さんとはご縁があったんです。私と仲間が「株式会社はてな」を立ち上げた創業の地が、大阪ガス都市開発グループの「京都リサーチパーク(KRP)」。当時無名の学生上がりの私たちを、大阪ガス都市開発グループの大人のみなさんが親身になって応援してくれました。一緒にビラ配りもしてくださったり。その後も、KRP内に異業種交流拠点の「たまり場」をつくられて、こんな面白い取り組みをする会社の分譲マンションのブランディングだったら面白いに違いないと思って。
最初に、大阪ガス都市開発の「売りは何か?」と聞いたら、「自分たちはものすごく真面目」という意見が出たんです。私が持っている不動産のイメージ、「きらびやか」「夢のような生活」とは真逆で「実直さ」が大阪ガス都市開発さんにはあるのだなと。それは、大阪ガスの企業文化だとも感じました。いわば、ガスという取り扱いが難しいものを町中に配っているんですもんね。その「実直さ」が不動産事業でも受け継がれている。
一方で「自分たちはディベロッパーとして認知度も供給数もまだまだ大手には及ばない中で、何を強みとして発信すればお客さまに自分たちの良さが伝わるのか悩んでいる」と弱気でおられて。「いいところあるでしょ?」と何度も聞き続けた記憶があります。例えば、既にお住まいのお客さまを訪問して地道にアンケートを取り、そこから改善案を出したり。自分たちが住む家がどうやってできるかを、工事現場でヘルメットをかぶって実際にお見せする「建設現場見学会」とか。すごく大変な、他の会社ではなかなかできないことをやっている。「いいところ、そこやん!」って(笑)。
売ったら売りっぱなしじゃなく、わざわざ聞きに行く並外れた生真面目さ。「建設現場見学会」も、工事現場というお化粧していない、きれいじゃないところを敢えて見せるという、それって合理的ではない(笑)。
まだ間仕切りもないようなところをお客さまと一緒に見て回って、最後にお客さまが「よろしくお願いします」って言って帰られたことにめちゃくちゃ感動して。やる価値ってここにあるんだろうなって。そういう真面目というか地道な部分が私たちの良さだと、戦略会議を通じてお二人に気づかせていただきました。だから、私たちのブランドは無理してお化粧をするのではなく、質の良さをしっかり伝えていくことにあると方向性が定まったんです。
家を買うという時に、最初は歓びが先に立っても、どこかで我に返る瞬間がある。「住み続けたらどうか」「このお金を払う価値は本当にあるのだろうか」と。広告のきらびやかさだけではねじ伏せられないところって絶対あると思うんですよね。その時に、「自分はこういう価値観でシーンズを選んでるんだ」って言えるかどうか。「建設現場に入って、俺この目で見たもん」とか「使い勝手がいいのよ。何故ならこのマンションつくった人ね、売った後にもまた家に来るのよ(笑)」っていうすごく腑に落ちる説明ができる。そこの価値観を高めていくことはまだまだできる。誠実さによってつくられるハイブランドを見たいです。
そもそもブランディングは、一般論・抽象論から解決策を考えても面白いものにならないと思うんです。意見をまとめようとせず、「自分だったら」と具体的に考える。大阪ガス都市開発なら「自分たちのアイデンティティはガスにある」と、安心・信頼を具現化すべくマンションの裏側も見せ、入居者の家にも足を運ぶという具体から入る方が、何回も聞いたことがあるようなマーケティングから出てくる一般論より絶対いいものができると思うんですよね。
プロデューサー・演出家・劇作家
小松 純也(こまつ・じゅんや)
1990年フジテレビ入社。以来30年にわたりディレクター、プロデューサー、番組企画者として制作の第一線で活動。担当する番組はNHK総合「チコちゃんに叱られる」、TBS「人生最高レストラン」等多数。並行して劇作家、演出家として演劇にも関わる。2019年株式会社スチールヘッド設立。
最初はみんな「このままじゃだめだ」と心細い中でやっていくうちに輪郭ができてくる。シーンズのこれまでの取り組みを見ていて、それが成熟しつつあるのかなと思うと嬉しいですね。
今までにない物をつくろうとしている強い意志を感じますね。ロゴも青地に白という今までの不動産業界ではなかったチョイス。
ブランドを考える時に、「自分たちが何者か」と突き詰めて考えるのと同時に「自分たちは何者じゃないか」も考える。案外「何者じゃないか」のところに願望があったりする。超えるか超えないかは自分たち次第だけど、大阪ガス都市開発は超えるために異業種の私たちのような人間を引っ張って来たりとか、ストレッチしていろんな新しいことに取り組んでいる。アートのサブスクサービスや多拠点居住の無償体験とかすごくいいと思います。
コーチ・ファシリテーター
近藤 令子(こんどう・れいこ)
1997年、ウェブサービスを提供する「株式会社はてな」創業メンバー。同社卒業後は「Voice4u株式会社」の取締役としてコミュニケーションアプリの開発販売、インターネットを活用したマーケティング支援や広報支援サービスを提供。現在は米国CTI認定Co-Active®︎コーチ、国際コーチング連盟(ICF)認定ACC。合同会社MOMENT代表。
ブランド戦略会議をした後にSUUMO AWARD 2021で、「創造性・先進性部門」の最優秀賞を受賞したんです。外部評価としていつか受賞したいと思っていたものが、お二人にアドバイスを受けながら、表現の仕方を自分たちで変えていく中で、想定より早い段階での受賞に繋がった。それってすごいことだなと思っています。
さらにブランド担当として感じるのは、今まではそれぞれの物件を売ることに集中していたのが、みんなにブランド意識が浸透してきたことで、ブランド全体で考えるようになってきたこと。人それぞれで解釈は違うかもしれませんが、「全員でシーンズというブランドを大事にしていこう、伝えていこう」という想いを感じます。
ガスというインフラを背負うグループ企業の信頼感がアドバンテージ。マンションを売るということを超えて、生活体験を売る。「こんなことできるんだ」という提案をこれからも続けていってほしい。自分たちの価値を強く目に見える形で表現していただき、さらに愛されるブランドになっていってもらいたいなと思います。
実直さというDNAは受け継ぎつつ、シーンズが増えて、点が面になって、他社とのコラボレーションも増えて、これからも住む人がワクワクする取り組みを続けていってほしいですね。
シーンズのブランディングを通して、各々がブランドに向き合い発信する流れが来ているように感じます。今後は他の事業とも連携しながら、大阪ガス都市開発全体でブランディングの風土がさらに醸成するようがんばります!