KRP10号館

開設から30年超のKRP地区に、2021年大規模オフィスビルがオープン。
京都の主要幹線道路である五条通に面し、隣接するKRP9号館との連続性あるデザインで、新たな都市景観を形成。

  • 2006 賃貸事業部 第1開発部 坂田 啓志

    入社後、KRP地区の各開発に携わり、10号館についても担当。工程やコスト管理、お客さまとの協議などプロジェクト全般に携わる。

新事業・研究開発などのイノベーションを行うためのオフィス集積地、KRP地区。
2021年2月、新たな大規模オフィスビルが誕生しました

左「KRP10号館」、右「KRP9号館」

KRP(京都リサーチパーク)地区は新事業・研究開発などのイノベーションを行うためのオフィス集積地で、1989年に開設しました。本件は、そこに複合施設となる最新のビル「KRP10号館」をオープンする大型のプロジェクトでした。竣工したのは2021年の2月です。約6ha(サッカーフィールドの約9個分)とまとまった広さの土地に、ビルを順次開発し、エリアを形成していくような事業は、当社ではこのKRP地区だけです。KRP地区は30年以上かけて開発を進め、今のようなオフィス集積地に発展しました。

私は開発を推進する部署となる第1開発部メンバーとして、この10号館プロジェクトの話が立ち上がった企画段階から、お客さまへの引渡しまで携わりました。オフィスビルの開発は、数年に及ぶ長期のプロジェクトになりますが、最後まで携わることができて大変よい経験になりました。

新しいオフィスビルなので、事業所移転あるいは新規出店をしていただくことになります。お客さまにとって非常に重要な一大イベントなので、プロジェクトに対する責任感を感じる一方、やりがいも感じながらプロジェクトを進めました。

京町家風景の演出や伝統材料へこだわり、
京都らしさを現代風に表現しました

町屋の「通り庭」と見立てたエントランスホール

アルミ鋳物の装飾パネル

当社では、技術面のアプローチについても、設計から物件竣工までの建築的な部分全般に関わります。

1階部分は、ビルのエントランスだけでなく、フードエリアの設置や、地域との接点となるにぎわい空間の創出、パブリックスペースの配置も考えなければならない重要なポイントでした。設計会社など様々な関係者の方々と情報交換、意見交換したプロセスが印象に残っています。

京都らしさを意識したのが、デザインにおける特徴の1つです。五条通に面した印象的なファサードは、既存の9号館との面的な連続性を持たせて、京町家が軒を連ねた風景を現代風に汲み取って表現しました。細かい部分では、エントランスの内装に京都の伝統材料である「鋳物」「土壁」「和紙」を用いています。オフィスビルでここまで材料にこだわっている例はめずらしいと思います。

これでプロジェクトは終わりじゃない。
オフィス集積地「KRP地区」の発展は続きます

長期にわたるプロジェクトなので、自らの士気を高めるために、私は短いスパンで目標を設定することで、その都度達成感を得られるように心がけていました。

難しかったのは、入居されるお客さまからの要望をいかに調整していくか、という点でした。前述のとおり、お客さまにとっても一大プロジェクトなので、多くの要望をいただくことになり、当初の計画通りには進まない部分も当然出てきます。そんなときは、技術のプロジェクトメンバーと相談して、どこまでならご要望を汲み取ることができるのか、予算を確認しながら調整しました。スケジュールにも影響するので、実際に工事を行う現場の方々ともすり合わせが必要でした。お客さまからのご要望への対応は苦労が多いですが、新しい職場として満足いただけるビルとして開発を終えられたこと、またお客さまからもそのようなお言葉をいただけたことは大きな喜びです。

KRP地区にはまだ開発用地が残る一方、建替えが必要となる建物も出てきますので、引続きKRP地区に携わることができればと思っています。

周辺地域の方々にも利用され、親しまれることで、
「KRP10号館」そのものの価値が高まっていきます

現場での小さな決定が積み重なり、建物ができていく様子を間近で感じられることも、デベロッパーとして大きなやりがいです。

このプロジェクトが形になったことを実感したのは、竣工して建物全体を見渡したときです。「この部分は設計会社さんが試行錯誤しながら図面を作っていたところ」「ここは職人さんが納まりを悩んでいたところ」「この部分は自分たちで色を決めたところ」など建築途中の記憶とつなげて建物を見たときに、完成を実感しました。

オープン後は、近所の方が連れ立って朝食を楽しんでいたり、五条通に面したスペースで散策・休憩していたりと、KRP地区の方だけでなく、地域の方々にも使っていただけている様子を目の当たりにでき、うれしく感じました。

周辺地域の価値が高まれば建物の価値も必然的に上がっていくので、デベロッパーの立場としても、プロジェクトの大小にかかわらず価値を引き上げられるような開発を今後も手がけていきたいと考えています。