シーンズ塚口

大阪ガスの社宅跡地にDaigasグループのDNAを注ぎ込んだシーンズ第1弾プロジェクト。
地域に開かれたランドスケープを創造し、まちと緑と未来をつなぐ街区再生開発。

  • 2007 分譲事業部 事業企画部 プロジェクト責任者 尾崎 景亮

    賃貸事業部 営業部から、親会社である大阪ガス株式会社へ出向、ガス機器営業などを経験した後、分譲事業部に配属。本プロジェクトの事業企画・推進担当。

シーンズブランド第1弾プロジェクト!
お客さまニーズを汲んだ商品企画で、グッドデザイン賞受賞

デベロッパーとして建物の開発に携わるからには、お客さまにとってはもちろんのこと、創り手をはじめ、全ての関係する方々が「いいものだ」と思える建物をつくることが夢です。私が担当する分譲マンションは、住む方々以外にも、マンションを取り巻く地域の方々や、地域の環境(安心・安全など)も開発によって影響を与える重要な要素です。本当に関わる「全て」にとってよい開発とは何か?を考え抜いてつくったのが「シーンズ塚口」(兵庫県尼崎市)です。

大阪ガス都市開発の分譲マンション「シーンズ(SCENES)」は、土地や商品企画、デザインにこだわり、「人生に感動する一邸を。」をコンセプトに立ち上げたブランドです。現在では、大阪、神戸、京都、首都圏でも展開しています。

「シーンズ塚口」は、シーンズブランドの記念すべき第1弾となったプロジェクトです。開発を担当した私自身のものづくりへの思いを込めながら、敷地配置計画による周辺環境への貢献と、居住者の方々の暮らしの質の向上が実現できたプロジェクトではないかと思っています。取組み内容もご評価いただき、2020年度のグッドデザイン賞を受賞することもできました。

大阪ガス社宅跡地開発というDaigasグループならではのプロジェクト。
人々の暮らしと社会に貢献できる開発を検討

「シーンズ塚口」の開発には、いくつかの特色や独自のポイントがあります。本土地はこれまで大阪ガスの社宅として利用されていた、当社にとっては非常に縁のある土地。このような背景もあり、エネルギー企業であるDaigasグループの一員として、省エネ・防災対応など人々の暮らしと社会に貢献する開発にしたいと考えました。また、在阪の大手デベロッパー2社との共同事業としたことにより、互いの持つ優れたリソースや知見を共有しながら開発を進めることもでき、様々な先進的な取り組みを導入することができました。具体的には、隣接する小学校への安全な歩道を確保するため、スクールゾーンに面する敷地北側にゆとりある空地と小路を整備。通学路の安全性を向上させると共に、ベンチも配した開放的な地域との交流の場を設けました。

また、その敷地北側に配した住宅棟とは別棟の低層エントランスは、敷地から大きくセットバックを取ることで近隣への圧迫感を軽減。災害など万一の際にもライフラインを確保できるようにガスコージェネレーションも設置し、有事の際の防災対応も確保しました。

住宅の開発規模は166戸とかなりの規模でしたが、駅に近く、大きな公園もすぐ隣にある恵まれた環境を活かし、南向き住戸を中心に、敷地内に3つの庭(緑地)を配した構成でプランニングを行いました。

目指したのは"我慢しない"エコ。
暮らすことそのものが環境貢献になり、プラスメリットまで享受できる理想の住まいを実現

各住戸においても、省エネ・環境性能には、これまでにないほどこだわりました。自宅でエネルギーを創り出すことができる家庭用燃料電池「エネファーム(typeS)」を全邸に標準採用し、共用部にも先進的な創エネ機器を導入するなどして、建物全体での省エネ性を高めることに力を注ぎました。ちょうど尼崎市が工業都市から環境モデル都市への転換を目指されているところで「シーンズ塚口」はそのコンセプトにぴったりなじむプロジェクトでした。

ここで重要なことは「エコを名目に我慢しない」という考え方です。環境負荷の低減が地球環境にとって重要であることは誰にとっても自明であり、それに貢献したいと誰もが思っています。住む方々が、何かを我慢・犠牲にすることなく環境貢献できれば理想的なので、エコでありながらも生活のクオリティは変えないようにしたいと思いました。エネファームなどの創エネ機器を導入することで、暮らすことでの環境貢献を実現しました。また、尼崎市から認定を受けることにより、面積の有効活用や、購入時の税・金利面でのメリットが受けられる「低炭素建築物認定」を取得したのも、そうした取組みの一環でした。

周辺での分譲マンション大量供給の中で、販売手法でもこだわりの差別化を実施。
「シーンズ塚口」への揺るぎない自信がメンバーの一体感を醸成

当時「シーンズ塚口」がお客さまに販売を開始する際には、周辺でも多数の分譲マンションが販売されていました。そのような状況の中で、私たちがつくってきたものを「どのようにしてお客さまに伝えるか」にも徹底してこだわりました。例えば、駅に近いことや、大きな公園に隣接しているなどの立地のプラス要素をうまく伝えるために、広範囲を再現したジオラマ模型を作成し、お客さまに実際に規模感を感じていただけるように工夫しました。

どのようなことでもそうだと思いますが、私たちがどんなにいいものだと言っても、その価値をきちんとお客さまに伝えることができなければ、それはいいものではないと評価されてしまいます。当たり前ですが、開発したマンションがお客さまにご評価いただき、購入いただくことで初めて事業が意味を成すと思いますし、会社としても利益が獲得できます。価格以上の価値があるという自信は揺らぎませんでしたが、どのようにすればお客さまにご評価いただけるかは、販売メンバーとも非常に悩みました。私たちの販売手法へのこだわりや市況もあり、結果として「シーンズ塚口」はご評価いただけたのではないかと思っています。

建物だけをデザインするのではなく、生活のデザインや機能美にまでこだわり、まちの一部として自信を持って誇れるランドマークレジデンスを残すことができたと思っています。